私の家の目の前にある中華料理屋は全テーブルに黄ばんだ灰皿が置いてある。
あと一歩で壊れる椅子に座ってタバコに火をつける。
NHKがけたたましい。
真っ黒なエアコンから異常に冷たい空気が吐き出されている。
短くなるタバコに宿る時の中で腐った水道水を飲む。
二度注文を聞き質されて、たった一人分の食事を待つ間、目の前にあった人の姿を透かして外を眺めていると大きな音をたててバスが到着した。
乗り込む人が永遠に去る。
私ももうすぐ去る。
ここに来ることも二度と無いだろう。
そしてなすすべなく記憶からも消える。
彼女が好きだったラーメンが湯気を立てている。