終わりにしか書けないこと
一週間前に吐いたゲロに虫が湧いている。
一度だけパスタを茹でた鍋にカビが生えている。
ベッドルームまで黒い塊が小さな足跡のように続いている。
空気が人の形に凹んでいる部屋の中で俯いたまま宙に浮かんでいる時、ふと目をやると時計の電池が切れていた。
手が届かないところにあるあの時計はどうやってあすこにぶら下げたんだろう。
捲られないままのカレンダー。
減らないトイレットペーパー。
埃が積もる大きなテーブル。
くるくると回りながら初めてそれらに見上げられ、どうも哀しくてやりきれない。
選ぶことが出来たのはもうずっと昔のことなのに、今でもそれらを選ばされ続けている。